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そんな折りだ、暇そうに過ごす私を見かねた父が珍しく私にある鍵をくれた。
それは、空かずの館とも言われた別館の鍵だった。
城の十分の一にも満たないその屋敷は、古い割には外も内も綺麗だった。
黒い柵に囲まれた池のある庭の中に立つ青い屋根の館。
柵を越え、石畳にそって歩いた先に金の扉があり、獅子の錠前が口を閉じた状態でたたずんでいた。
幼心の私は、好奇心に胸打たれ、錆びた鍵で獅子の口を開けた。
それは、錆びた鍵を使ったとは思えないほど素直に開かれた。
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