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「よかったらまた誘ってね?」
「うん、こっちこそ。今日はありがとう。」
今度こそ別れの言葉を交わし、そのまま道を行く宮原と、来た道を引き返す僕。
何となく名残惜し気に振り返りたくもなったけれど、グッと我慢する。
我ながら女々しい。
途中道すがら先程の「ピアニシモ」に寄り、家族へのお土産を買っていく。
たまには長男らしいこともしておこう、という算段。
駅。
いつも通り改札口を定期券で通過する。
腕時計を確認すると、電車が来るにはまだ少し時間に余裕があった。
駅の歩廊に立ち、ポケットからケータイを取り出す。
もうあまり充電もない。
いじるのは諦めて再びポケットに仕舞おうとしたところで……。
『ブー、ブー、ブー』
手の中で、ケータイが振動した。
長いバイブということは着信だろうか。
ディスプレイを覗くと、そこには知らない番号の表示。
「……なんだ?」
これが俗に言う、イタズラ電話なのか?
幸運にも未だそれを経験したことはない。
無視しようかと思いつつ、それでもやはり知人からの連絡の可能性がよぎる。
何度目かのコールの後、迷いながらも通話ボタンを押した。
「もしもし?」
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