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ドアも窓も、おおよそ外部との通路と呼べるようなものは一切存在しない。
……ように見える。
いや、冷静に考えてみればそんな筈はない。
それは"僕がこの部屋にいること"こそが何よりの証拠なのだから。
とにかくもう少し細かく調べてみれば何か分かるはずだ。
腕時計に目をやる。
6時30分。
"アレ"からほとんど時間は経過していない。
「今は……他のこと考えたら駄目だな。」
自分に言い聞かせつつ。
手始めに正面の壁に寄ってみる。
改めて見て、それは異常。
真っ白な壁面には傷や汚れひとつない。
そして何より光源の正体。
「壁そのものが発光している、のか」
まるでケータイのディスプレイのようだ。
いや、ケータイのような人工の光とも少し違うのだけれど。
壁の側面に沿って歩く。
だいたい10歩ちょいの距離。
壁の色彩のせいで遠近感覚が狂っていたが、ここは思ったよりも広い造りになっている。
特に目につくものもなく、隣の壁、隣の壁へと調査の手を移していく。
そして4枚目の壁にとりかかったとき、
「ん、これは………」
白が同化しているせいで目立たないが、小さな取っ手のような出っ張りがあるのを見つけた。
ドアノブ?
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