プラットホームダイブ

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誰にでもアレルギーはあると思う。 卵アレルギー、猫アレルギー、勉強アレルギーetc……。 最後のは例外として、どのアレルギーにも言えるのは、そこに自分の意思だとか願望だとかが介在する隙はないということ。 別に僕はフィクションが嫌いだから読まないわけではなくて、読めないからこそ嫌いなわけである。 この違いは実に大きい。 「……さて、教室に戻らないとね。」 カバンを置きっぱなしで出てきてしまった自分に呆れつつ、小走りで向かう先。 2年5組。 ガラッと扉を開けるとそこには意外な人物があった。 「あ、瀬奈くんおかえり。」 「宮原?」 宮原知清(ミヤハラチセ)。クラスの学級委員長が一人、誰もいない教室で居残っている違和感。 ……どうして? 「わ、ひどいなぁ。一応これでも瀬奈くん待ってたんだよ」 「……あ、カバン。」 ピンポーン、と人差し指を立てて笑う。 宮原の人当たりの良さは男女問わず定評があった。人気もまた然り。 僕のように中途半端な自称真面目ではなく、正真正銘の優等生だった。 「待っててくれたんだ、鍵閉め。」 「えへへ、まぁこれも仕事のうちですから。先生に呼びつけられて、そのうえ教室閉め出しまで食らったら、結構ブルーじゃん?」 笑顔。 笑顔は伝染する。 「うん、ありがとう。助かったよ。」 言いながら机上のカバンを手に取り、二人して教室を出た。 実を言うと僕は宮原のことが好きだ。
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