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「良かったら教えて欲しいんだけど、瀬奈くん、なんで先生に呼び出されてたのかな?」
唐突な問い。
別に隠すようなことでもないので、正直に話す。
「いわく、留年の危機だって。」
「留年?何か苦手教科あったっけ?」
「強いて言うなら…フィクション、とか?」
「フィクションって……作り話?」
「そうそう。どうも苦手なんだよね、ああいうのって。」
本当は苦手とか以前の問題なんだけど。
「へぇ……ならヤバいのは国語?」
「うん、あと英語も時々ね。来年からは理系に進路を定めることにする。」
理系科目に作り話の入り込む余地はない。
「でもフィクションが苦手っていうのはレアケースだよね。普通は論説とかのほうが敬遠される気がするもん。」
「逆にそっちは得意かな。次の範囲は論説だったから問題ない。」
英語も古文もちょうど上手くハマった。
「じゃあ来年もよろしく、だね。」
「宮原も進路は理系?」
「うむ!私はこう見えても数学は得意なのだよワトソンくん!」
「……なら数学で困ったときはお願いしますよ、教授。」
「ふふっ、オーケーオーケーワトソンくん。泥舟に乗ったつもりで、どしどし私に頼っちゃってくれたまへ。」と、得意気に胸を張る。
……こんなやり取りでも可愛いと思ってしまうのは、それはやはり恋は盲目ということなのか。
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