プラットホームダイブ

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もし時間を司る神サマがいるのだとすれば、そいつはきっと相当に性格が悪いのだ。 光陰矢の如く、もとい8ミリバルカン砲(弾数4800発)が如く過ぎてゆく。 それが楽しいことともなれば尚更。 「えっと、宮原の家、このへん?」 「うん、ここから徒歩10分ぐらいかな。瀬奈くんは?」 「結構遠いよ。電車通学だから。」 つまり一緒に歩けるのはここまで。 この夢のような時間も終わり告げる。 「ねえねえ、瀬奈くん。」 前を歩く彼女の体が半回転。 クルッと振り返り、目が合う。 不思議なことに、多分、それは初めてのことだった。 「一つ、聞いてもいいかな?」 「…………何?」 なぜか身体が強張る。 その改まった言い方故か、あるいはその真剣な表情に圧倒されたのか。 「あのね……」 ゆっくり、彼女の口が動く。 その言葉は、告げた。 「君にとってこの世界って、何?」 ………………。 はっきり言おう。 何を言ってるのか、よく分からない。 「僕にとっての……世界?」 地球?日本?それが何だって? クイズだろうか。 考え込む。 「…………。」 そんな僕の反応に、彼女は少し目を伏せて。 そしてまた、笑う。 その表情を見たときに、僕は何となく宮原知清という人間を遠くに感じた。 彼女の笑顔はひょっとすると仮面なのかもしれない。そんな風に思わせる、違和感。 「あ、ごめんね。変なこと聞いちゃって。私ってたまに変なスイッチ入るみたいで、よく友達からも引かれちゃうんだよね。」 「いや、別に引いてるわけじゃ……」 ただ、少し意外だった。 こういう表情もするのか、この人は。 「えっと、忘れていいからね。今の。」 私ってばバカだなぁ、と手を頭に恥ずかしがる彼女。 「…………」 それが何となく演技のように見えたのは、僕の思い上がりなのか、あるいは。
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