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「警察官は勇敢な青少年によって去って行ったみたいだな…」
俺は隣で、唖然と言う2文字が似合うような顔をしている女の子に話しかけた。
年は、俺とリンダと一緒くらいだろうか。
さっきは遠目だったが、近くでみると確かに美少女だ。
リンダはこの娘を天使と比喩で表現していたが…。どちらかと言うと、その短い髪と整った顔立ち、ちらりと見える八重歯、残念な体け…陸上しているかのような、走るときにあまり支障の出ないであろうスレンダーボディ。
そんな容姿に似合うのは、天使と言うより…小悪魔だろう。
どうだ!リンダよ、俺にも比喩は出来るだろう!
「っあ…あっ!ありがとうございます!おかげさまで助かりました!」
女の子は、突然の俺の問いかけに『あぅあぅ』と焦りながらも、全てを察したのかペコリと頭をさげてお礼をした。
このご時世には似てもにつかない、とてもいい娘だ。
「い、いや!お礼は俺よりさっき自転車で走っていった自転車泥棒に言った方がいいな。あのバカは俺の友達で、君を助ける為に自ら捨て身の作戦に出たからな…」
そう言うと、女の子はクスクスと小さく笑った。
「では、ボクの為に危険なのに助けて頂き『ありがとうございました』…と、伝えといて下さい。」
しかし、本当になんて礼儀ただしい女の………子。
「ボク?!」
しまった、つい焦って思った事を口に出してしまった。
落ち着いて考えれば、女の子が『私』と言わなければならない!って言うのは、男の固定観念なのかもしれない。
この娘も、女の子だけど男の子みたいに『ボク』と使いたいだけなのかもしれないしな…。
「っあ、言ってませんでしたね!良く間違えられるんですけど、ボク…男の子ですよ!!」
あー、そもそも女の子が男の子の一人称に憧れて『ボク』と言っている…そんな考えが、俺の固定観念だったらしいな…。
言わば逆転の発想だ。
この女の子は、女の子ではなくて、男の子だった訳だったんだな。
「とんだピエロだぜ!!」
「!!!?」
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