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「ねぇねぇ、浩一」
「…何だ」
浩一はコーヒーをすする。
寝起きの眠気が吹き飛んだ。
息を吐くと湯気のようなものが空中に吐き出される。
「来年は社会人だねー」
「今さら何を…」
浩一は瑠美の言葉に呆れたように返した。
「いやさ、夏休みにサークルの卒業旅行があるじゃん。行き先を早く決めないと…」
「そういえば担当はお前だったか…」
浩一は再びコーヒーを口に運んだ。
程よい苦味が口に広がる。
「もう…そんなに経つんだな…」
「…浩一?」
「………」
あの事件から五年。
浩一と瑠美は大学も卒業を控えた四年生になっていた。
瑠美は必死で勉強して、浩一と一緒の大学に入学した。
そして二人は同居。
曲がりなりにも幸せな日々を送っている。
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