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部屋の天井から、幅2m位の太い円柱型のアクリル板で出来た水槽のような入れ物が伸び、その根元は人の腰位の高さまでの機械が、地面に埋め込まれていた。 ケースの中は金色の半透明な液体が充満し、それはまるで先ほど見た山羊のホルマリン漬けをとても大きくしたかのようだった。 そして山羊と同じように、ケースの真ん中には生きているか死んでいるかも分からないような物が浮いていた。 人間。 身長はかなり高いが、細身で引き締まった若い男性だ。 白い肌は日本人の物ではないが、頭から流れる伸びに伸びた黒髪は日本人のように見える。 身体中に傷があり、その血管と思われる所には下の機械と天井から伸びた点滴のようなチューブが刺さっている。 そして揺れる髪の間から覗く顔は、瞑目[メイモク]して安らかに眠る天使の様に、整った美しい顔立ちをしていた。 気付けばこの場所の不気味さや、はたまた今抗争中だという事すら忘れて、伊織と桜芽は一緒になってその姿に見惚れていた。 それは一つの完成された、美しい作品の様だった。 「……素敵」 「…うん」 思わず口をついて出た言葉だったが、桜芽の呆然と答える声が返ってきた。 恐らく桜芽も、同じ様な気持ちなのだろう。 「…これ、生きてるんですかね」 「生きてるんじゃない…かな?」 二人が目を離せずに見ていると、男性の下の機械に取り付けられたディスプレイが、突然光った。 砂時計がくるくると回る画面の後、そこには文字が浮かび上がる。 “ーRRR ProjectーーInstallー” “ーRebootー” 文字はそれを何度も交互に点滅してから、最後に短く変わった。 “ーOK?ー”
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