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金色の水の中…。 扉の閉まる音を聞いて、閉じていた右の瞼[マブタ]がゆっくりと開いた。 そこから覗くのは、紅玉[コウギョク]のような眼球。 それは数回左右を見回し、ぱちくりとまばたきをした。その興味は、閉まった扉の向こうに行っていた。 <律儀に扉は閉めるなら、OK位押せばいいのに…> 溜め息のような声がアクリルの円柱型の壁にぶつかり、何度も反射しては眼球の上で鳴り響いた。 青年の右目だけが活動している。 その血のような紅の瞳が、青年の意識は置き去りにしたまま蠢[ウゴメ]いていた。 青年の下の機械画面に映し出された、RRR再起動プログラム。その実行ボタンは誰にも押されずに、未だに点滅していた。 <やれやれ…> 眼球の溜め息のような声の後、画面のカーソルがじりじりとひとりでに動きだした。 小さな矢印が、“-OK?-”の上に動き、カチリ、というわざとらしい音を立てる。 途端に下の機械が唸[ウナ]りを上げ始めた。 ずっと使われていなかったOSが回る音と、無駄に積もった埃を吹き出して排気用のファンが回る音がする。 画面上の矢印は砂時計に変わり、くるくると中のシステムが立ち上がるのを待っている。 すると1分と経たずに、その唸りは落ち着いた。 画面が切り替わる。映ったのは、細長いメーターだ。 その内容が分かっているのか、紅の目玉は『よし、やるか』と、呟いて何かを始めた。 再び中の機械が唸りだす。
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