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少年は階段を回って階下の会場に下りていた。赤い絨毯の上を歩き、歩んだ先は皇帝陛下の所だ。
突然現れた皇族に、あっという間に貴族の壁が二つに割れて道を作った。少年はその真ん中を歩み続け、そして皇帝陛下と謝る貴族の男の横まで来ると、ただ皇帝一人を見上げた。
「皇帝陛下」
「なんだ」
皇帝は低い、威厳に満ちた声で答えた。
身長190cmを超える巨大な男で、全身を鉄のような筋肉で覆い、その上に少年と同じ純白と金の服を着ていた。
皇帝の服はローブではなく、型はマント付きの軍服だった。いつでも戦場で陣頭指揮をとれるようにと、大抵はこの姿でメディアにも出ている。
幾ら年の割には長身とはいえ、すらっとした体躯の少年には、それはいつでも壁のように見えていた。
今もそれは感じている。
しかし、少年の顔には恐れなど全く映って居なかった。それどころか、笑みすら浮かんでいる。
そして口を開くと、彼はこんな台詞を吐いた。
「さしでがましいようですが、一貴族の面子[メンツ]よりも、淑女[シュクジョ]が肌をあらわにして、ましてや王宮に居ながらに放置されている方が、私は心苦しいのですが」
「ふん、ならば片付けておけ」
「仰せの通りに、叔父上」
短い会話ながらに許しを貰うと、少年はさっさと大男達を置き去りにして振り返り、少女に向かって歩き始めた。
すると慌てて少女の兄らしい少年が、妹を自分の後ろに隠すように前に出て、形式通りのお辞儀をした。
身長も年齢も上の紅の髪を持つ少年を、皇族である少年は立ち止まって見やる。
紅の髪の少年はどこか怯えたように視線をさ迷わせながらも、その顔を上げた。
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