歌手Aの放送事故

2/3
前へ
/163ページ
次へ
1988年の事である。 この年の10月3日、埼玉県に住む少女が、強姦後に殺害されるという事件が発生する。世を震撼させた殺人鬼は『89年7月23日』、警察当局に拘束されるまでの間に、彼女以外にも3人の少女を殺害していった。 話を戻し、この殺人鬼が逮捕される"20日前の"7月4日(土)深夜、そのアイドル歌手(女性)は、当時絶大な人気を誇ったカップリング番組にゲスト出演していた。司会を担当するのは人気の漫才コンビである。番組はこの日、「七夕特集」として放映されていた。 そして、問題のシーンは番組序盤に流された。 アイドル歌手N.Aに、漫才コンビの片方N.Kが、彼女の理想の男性像(彦星)に対して質問する。このとき、視聴者は皆「男性歌手M.K」の顔を想像したはずであった。 しかし、意外なことに歌手Aは今まで聞いた事も無い「ある名前」を口にしたのである。 漫才コンビは二人とも判らない表情をしている。しかし、すぐにN.Kが気付く。 「それって、山崎務さんの間違いじゃないの?」と、アイドル歌手に話した。 どうやら彼女は姓字で一字違いの、映画俳優の名前と間違えて伝えたみたいであった。 彼女はまずいと思ったのか、笑って取りつくろった。 その瞬間である。 突然、放送画面が中断してしまったのである。 30分以上に及ぶ長時間の中断は、誰が見ても異常な状態であった。 これが有名なAの放送事故事件であるが、「問題」はこの続きにある。 彼女はこの放送の一週間後、7月11日に自らの手首を切り、自殺未遂をはかるのである。 原因は先ほど記した、男性歌手M.Kとの破局であることが報じられた。 そして12日後、23日のニュースで世間は震撼する事になる。 今まで世を恐怖に落とし入れてきた「見えない悪魔」、連続幼女誘拐殺人犯が逮捕されたのである(この時点では疑いの段階で、本逮捕は翌月8月10日である)。
/163ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加