後輩と僕

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僕、佐伯 孝太には悩みがある。 丘野上高校部活棟4階、文芸部部室の自分専用のパイプ椅子に腰掛けながらも僕は思う。 「その悩みとは、彼女があまりにも可愛すぎることである」 違う。 この文芸部、実際は廃部当然で部費も0円。つい最近まで部員も僕一人だった。 「そして僕は童貞だった」 違う。 ……違わないが。 机を挟み、パイプ椅子の背もたれを抱くように座っているのは佐久間 美希。僕の後輩。 何を血迷ったのかこの廃部寸前の文芸部に入部してきた1つ年下の女子。 「容姿端麗、成績優秀、まさに完璧と呼ぶに相応しいが、残念な事に胸はCカップで……」 「あのさぁ」 いい加減ほったらかしておくのもどうかと思い声をかけてみる。 「なんですか? 先輩」 佐久間はキョトンとした上目遣いでこちらを覗き込んでくる。 小動物を思わすそのしぐさは可愛らしい。しかし今はその可愛さはかなりどうでもいい。 「モノローグに割って入ってくるの止めてくんない?」 「モノローグってなんですか? 気持ち悪いですよ?」 「あと文章なのをいいことに詐欺するのも止めてくれない? どう見てもCはないよね」 小柄でスレンダーな体つきから見てわかる通り残念ながらその膨らみは貧相だ。 「なんで先輩みたいな童貞にそんなことがわかるんですか?  触った事もないくせに。気持ち悪いですよ?」 「何!? 君はひょっとして僕を罵り続けないと死ぬの!?」 「はい、つまり先輩がいないと生きていけない体です」 「誤解を招く表現は止めなさい」 これは、こんな後輩と僕の話。 「真実の愛を知りたい人は是非どうぞ」 「だからモノローグに入ってくるなって!」
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