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「事実は小説よりも奇なり」という言葉がある。
こういうメタい発言は極力避けているのだが、この世界も所詮は小説、『作者』の創り出した物語でしかない。それ以上でもそれ以下でもなければ、『現実』に取って代わることなど、絶対にない。
しかし、『恋愛ピエロシリーズ』という世界観に『事実の焦点』を置くのであるならば、やはりオレの奇譚は、小説を超えた奇であるのだろう。
まあ、小説――人の創造した物語を超える奇とは、いったいどんなものなのかという、無粋で無為な疑問はひとまず置いておこう。
前置きはこのくらいにして、そろそろ語り始めるとしようか。正直、予定以上に話してしまった。
初めは……そうだな、あの話から語るとしよう。
あれは、オレが色彩高校に入ったばかり――高校一年生の頃だ。
その頃、オレは夏休みを迎えていた。のだが、間の抜けたことに、『夏休みの課題』なるモノの一部を、学校に置き忘れてしまったのだ。
それを取りに学校へ行った時、それは起こったのだ。
しかし、仮にオレの人付き合いが芳しく、『色彩七不思議』の一つであるあの話を知っていたところで、あれを未然に防ぐことなど、できはしなかったのだろうが――――……。
――――――――
「あっっっちぃ……」
雲一つない晴天から、病気になりそうなほどに強い日差しがさんざめく降り注ぐ夏の日。
世間は、茹だる様な熱気に包まれていた。まったく、温暖化には困ったものである。
しかし、温暖化する前の方が気温は低く、熱中症患者が続出していなかったと言われても、果たしてピンとくるだろうか。いやこない。昔は昔で、きっと人類は暑さに悶えていたはずだ。ワンパクなガキ共は知らんが。
まったく、宿題を忘れたせいで学校に出向かなければならないとは、我ながら何とも間抜けな話だ。
身体から噴出した汗が、学校指定のシャツを濡らし、べったりと引っ付くのは、梅雨時とは違った不快感があるものだ。
それにしても暑すぎるだろう……。
心なしか、数メートル先が陽炎になっている。
今日が八月十四日か十五日なら、どこかで少年か少女が事故に遭っているだろう。そんな妄想をしてしまうほどに、オレの頭は紫外線に遣られているようだ。
今日が八月の半ばだったら、それはそれでホッとしたが、残念ながら今日は七月二十六日だ。八月の気温を考えると、憂鬱になっていしまう。
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