1・わたしが彼の家に侵入した日のこと

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まあ、普通の人ならそこで冷静になって、 『見つかる前に出よう』 と思うでしょう。 例に漏れずわたしもそうだった。 ガレージからは庭へと繋がっていそうだったので、こっそり門から出よう、と。 ガレージを出、誰かと目が合うのを憚るかのように、 わたしはできるだけ屋敷には目を向けず とことこと庭を横切り、大きな黒門の前へ立った。 (A市には洋館もたくさんありますが、 この家は二階建ての和風家屋で、お庭も立派な日本庭園でした。) わたしは門のノブに手をかけ、 音をたてないよう、恐る恐る扉を引いてみた、 が、 開 か な い 。 押しても引いても、上下左右いかなる向きにも引いてみたものの 開 か な い 。 この時冬だったんですけど、その瞬間汗どっちゃあですよ。どっちゃあ。
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