1・わたしが彼の家に侵入した日のこと

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「あ、」 視界が裏返る。 南の空に差し掛かる低い太陽がわたしの顔面を淡く撫でた。 山の斜面から見える美しいA市の風景が、一瞬にして塀に閉ざされる。 わたしはその瞬間、 "自分が落ちている感覚"を体感していた。 (あ…………、受験生太り、Fxxk………) 頭によぎるは、先程までその足で立っていた日本庭園。 置き石に渡し石、池には縁石、石灯篭……… とにかく伝統ある日本の石庭。 (わたし……、どうなるん) 次の瞬間、万有引力がわたしを受け止めた。 頭に雷が落ちたような衝撃を感じたわたしは、意識を手放した。
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