1・わたしが彼の家に侵入した日のこと

13/66
前へ
/104ページ
次へ
すると男は、 そのよく見えない男の顔は、再びニヤリと笑った。 「ま、警察は呼ぶけどね。」 「な(゚。゚;)!!!」 動揺していると、男の陰は立ち上がり、 懐から取り出したケータイで、もう今にも110番通報をとしようとするのだ。 「っ…や!やめて!」 倒れた体勢のまま、わたしは必死に男に訴える。 「何?聞こえない。」 男はもう受話器を耳に押し当てている。 「やーーめーーてーーー!!!!!!!泣」 わたしは有らん限りの力を込めて立ち上がり、素早く男のケータイをひったくった。 「あ。」 「え。」 男とわたしの声がかぶった。 「言い忘れてたけど、俺あんたを『助けて』あげてなんかないよ。」 男と同時に「え。」と声をあげたわたしは、信じたくない気持ちを抑えながら、恐る恐る自分の足元を見た。 「あら~、なんとまあ綺麗なこと(´∀`)🌷」 足元には美しい錦鯉が数匹、ゆらゆらと泳いでいる。 そして群がった鯉たちは、次々にわたしのふくらはぎをつつくのだ。 「…………い、」 ひどく擦りむいてタイツの破れているひざ小僧には、見たことのない水生昆虫が張り付いていた。 「いやあああああああああああああああ◎×※△😱😱😱😱😱😱😱😱」 そう、わたしは池に落下していたのだ。 『……午前11時52分40秒をお伝えします……』 男から奪い取ったiPhoneからは、時報の女性の声が虚しく響いていた……。
/104ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加