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すると男は、
そのよく見えない男の顔は、再びニヤリと笑った。
「ま、警察は呼ぶけどね。」
「な(゚。゚;)!!!」
動揺していると、男の陰は立ち上がり、
懐から取り出したケータイで、もう今にも110番通報をとしようとするのだ。
「っ…や!やめて!」
倒れた体勢のまま、わたしは必死に男に訴える。
「何?聞こえない。」
男はもう受話器を耳に押し当てている。
「やーーめーーてーーー!!!!!!!泣」
わたしは有らん限りの力を込めて立ち上がり、素早く男のケータイをひったくった。
「あ。」
「え。」
男とわたしの声がかぶった。
「言い忘れてたけど、俺あんたを『助けて』あげてなんかないよ。」
男と同時に「え。」と声をあげたわたしは、信じたくない気持ちを抑えながら、恐る恐る自分の足元を見た。
「あら~、なんとまあ綺麗なこと(´∀`)🌷」
足元には美しい錦鯉が数匹、ゆらゆらと泳いでいる。
そして群がった鯉たちは、次々にわたしのふくらはぎをつつくのだ。
「…………い、」
ひどく擦りむいてタイツの破れているひざ小僧には、見たことのない水生昆虫が張り付いていた。
「いやあああああああああああああああ◎×※△😱😱😱😱😱😱😱😱」
そう、わたしは池に落下していたのだ。
『……午前11時52分40秒をお伝えします……』
男から奪い取ったiPhoneからは、時報の女性の声が虚しく響いていた……。
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