1・わたしが彼の家に侵入した日のこと

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「え?えー!待って!待ってください、そんなわけない!!!!!」 こんな姿で家に帰れるわけがない。 帰る最中も、帰ってからも、思いやられるばかりである。 「だよな。」 男は振り返って少し笑った。 そしてわたしの元に戻ってくると「はい。」と自らの手を差し延べた。 「…え?」 「どうぞ。」 男はなんともないような顔をして、汚く濡れたわたしに手を差し延べている。 わたしは面食らった。 池に落ちて、わたしの手は汚い。 小綺麗にしてある男を、その大きくて白い手を、汚すのは憚られた。 池の縁の岩に左足をかけ、恐る恐る彼の差し延べた手の近くまで腕を伸ばすと、それに触れる前に彼がわたしの手を迎えに来、わたしは強い力で引き上げられた。 水に濡れて重たくなったわたしの体が、 ふわりと持ち上がる。 しっかりと握られた手。 (ごめんなさい。) そんな自責の念よりも何よりも、わたしは高鳴りのやまない胸に意識の中枢を持っていかれていた。 (なんだこれ…………) 握ったことのない男性の手―― 心の中で何かがころんと音をたてた。 そうして右足が地面に到達する頃にはこう感じていた。 女子校生徒、チョロい(´;∀;`)wwww
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