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第1章 出会い
『お先失礼します』
「お疲れ様」
18時を過ぎたのに、うだるような暑さが残っている。見上げれば夕焼けで空は赤みが強くなった空をしているのに気温だけは昼間のまま。
トボトボと駅まで歩いていると、人けの無い公園に1人の幼女が砂場で遊んでいる。周りには親らしき人はいない。
『1人で遊んでいるの?』
「うん!パパがねもうすこしでくるの」
『そっか…それまでお姉ちゃんと遊んでくれる?』
「いいよ!」
どんどん暗くなるので悠紀は1人に出来なかった。それに親にも一言文句を言いたかった。2人で砂場遊びをしていると、足音が近付く。
見上げると男が立って悠紀を睨むように見下ろしている。悠紀は手に付いた砂を叩き落し、立ち上がり男と同じ様に睨んだ。
『私はあそこの建物で働いている佐々木 悠紀と申します。帰宅中にアンジュちゃんが1人で遊んでいたので声を掛けました』
「そうでしたか…」
『こんな遅くまで小さい子を1人にするのは如何なものでしょうか?』
変わらず鋭い視線を悠紀が向けると、男は眉を下げた。
「職場に連れて行っているのですが、たまにこうして出て行っちゃうんです」
『公園に居るから大丈夫とでも思っているんですか?』
「それは…」
『こんなに死角ばかりで危険極まりないんですよ』
「はい…」
これ以上は余計なお世話になると思い、一礼して設置されている手洗い場へ向かった。
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