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自嘲気味の苦笑いを吐き出すと帰路へ着いた。自宅へ着くと男が出迎えた。
「おかえり」
『ただいま』
部屋中に広がる夕飯の香りに悠紀の胃袋は刺激され、要求音がこだまする。気にする事もなく荷物を置き、食席に座った。
「鳴りっぱなし」
笑いながら言われると、流石に恥ずかしくなり止めるように摩る。
『一仕事してきたんだから』
「また…面倒事を抱えてきたの?」
『面倒事じゃないよ』
呆れ気味に男は溜息をつきグラスとビールを渡した。手酌で注ぎ、男の座る所にも置かれたグラスにも注ぐ。
「のんちゃんが顔を見たいって」
『暫くは無理だと思う』
「やっぱり面倒事抱えている」
『実紀には迷惑かけませんよーだ』
年甲斐もなく舌を出すと「頼みます」とあしらう様に返事をして食事を進める。言い方に不満があるが、目の前に並んでいる料理を見るとどうでもよくなってくる。
『いつもありがとう』
「いえいえ」
仕事が不規則で深夜帰宅でも実紀は温かいご飯を用意して待っててくれる。実紀も仕事が忙しく、悠紀より早い出勤だってあるのに必ず起きている。
「明日休みだから掃除しておくよ」
『本当にありがとう!助かります!』
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