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食べ終わった食器を台所へ持っていくと「埃臭いから風呂へ行け」と言われてしまった。浴室へ入り脱いだ服に鼻を近付けると、僅かだが埃臭い。
『実紀は犬?』
「人間だよ!」
『あら、聞えた?』
「バッチリ」
ドア越しに会話を繰り広げる。脱ぎ終わると浴室へ入る。今日はラベンダーの香りが広がっている。毎日日替わりの入浴剤なので、スパに行かなくても十分リラックス出来る。これも実紀が毎日用意している。
『おんぶに抱っこだわ』
こうなったのも理由がある。実紀が呆れていた「面倒事」を請け負った事でストーカーにあってしまった。警察に言っても何もしてくれず、困り果てて実紀に助けを求めた。
実紀が悠紀の分からない所でアクションを起こしストーカーが捕まった。それでも心配して今も側に居てくれる。
『はぁ~』
悠紀にとって実紀という存在は親よりも大きく、誰よりも頼りにして何でも相談している。実紀も悠紀の事ならどんな大変な事でも引き受けてくれる。
お風呂から出ると雪崩れ込む様にソファーへ身体を預ける。
「オッサンが居る」
笑いながら水を手渡した。
『ありがとう』
半分ほど一気に飲み、至福の溜息を漏らすと「何処までオッサンなんだよ」と再び笑われた。
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