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「ねぇ、悠紀」
急に真面目な声になった実紀を見上げる。表情も引き締まり、真面目な話しをすると示していた。
『……』
「呆れ半分心配半分なんだよ」
夕飯の時に話した続きだった。悠紀も水をテーブルに置き、表情を緊張させた。
『うん…』
「アイツだってこの世の中の何処かに居るんだよ?」
『うん』
「悠紀があんな恐い思いをするのは見たくないからね」
『実紀、ありがとう』
悠紀の頭を数回ポンポンするとリビングへ出た。あの時の事は実紀しかしらない。親にも親しい人にも友人にも相談しなかった。
回りへ被害が広がる事を恐れ誰にも助けを求められなかった。
『はぁ…。でも、見過ごす事は出来なかったよ』
夕方の出来事が脳裏を浮かぶ。きっと実紀だって…と思うと同時に実紀の優しさが胸を痛ませる。
言っている事だって十二分に分かる。それでも約束してしまったから明日は絶対に行かなければならない。
『……っ』
実紀との約束を破った事に気付いた。これは先程の注意では済まされない。勢い余ってだが、そんな事は実紀には通用しない。
『はぅぅっ…』
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