*1Light* 急展開、凶展開。

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「…っ」 自然と眉間にしわがよる。 眩しさに 目をしかめてる… それだけじゃない。 あまりの歓声の 大きさが、苦痛で 仕方ない。 そんな歓声は 1人の男の、 たった一言で止んだ。 「静粛に。」 そう、この一言。 たった一言で。 静かになった館内。 なおももがく俺に、 痛々しい…鋭い 視線が突き刺さる。 (…転校したい。 むしろ死にたい。) ―今日、というか ついさっき会った 知らない男に からかわれ。 男なのに お姫様抱っこされて。 そのまま 全校生徒の前に 曝される、なんて。 …きっと明だったら 殴ってる。絶対。 というか俺も 殴りたい。今すぐにでも。 ぐっ、と拳を握りしめ、 屈辱に耐える。 そんな俺を見て、 俺を抱える元凶の男が ふっと笑った。 (…こいつ…ッ) またからかわれてる。 本気でイラついた俺は 上半身を思いっきりよじり、 さっきよりもさらに 抵抗した。 その拍子に 俺の髪を束ねるゴムが、 プチリ、ととれる。 ふぁさ、と長い髪が 肩に落ちてくるのが わかった。 これを合図に ヨウ先輩は、 グイッと俺の上半身を 持ち上げ、 「1-S、五十嵐翔平。 彼が今日から 副会長となる人物だ。」 と優しく、でも有無をも言わせない 強い言葉で 衝撃的な事実を発した。 とたんに館内が 騒めき始める。 「1年が!!?」 「きゃーっ 素敵ー!!!!」 「なんかおとなしそうだな」 「やっべマジ美人…」 「女かと思ったわ…」 「そんな…ッ1年なんて…」 「彼は雪桜と同様に、 入学試験を トップで合格した。 つまり生徒会に入る 資格は十分ある。 生徒会に、外部も 内部も関係ないだろう。 …それとも、彼に 何か不満でも?」 騒めく生徒たちを 途端に黙らせ、 あわよくば拍手さえも させてしまうこの男。 学園にとって、 どんな存在か… もう嫌でもわかって しまった。 (…ッでも俺は 副会長なんて やりたくない…!!) だけど。 今ここで辞退をすれば、 批判こそ受けるものの 普通におくるはずだった 平凡スクールライフは 絶対に返ってこない。 (なんで、 こうなったんだろう…) ―どの道、もう どうすることも できない。 諦めのはやいことに 定評のある俺は、 抵抗を止めて うなだれるしかなかった。 .
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