509人が本棚に入れています
本棚に追加
/279ページ
少女は気づかない
竹刀を振る事に夢中で
手のマメが潰れ、己の血が竹刀に滲んでいる事さえも気づかないのだ
すると木の影から一人の青年が出て来る
目つきが鋭く、スラッとした鼻、形のいい唇、役者顔負けの顔立ちだ
そんな彼は漆黒の黒髪を後ろで少し高めに結っていて、これまた漆黒の着流しを着ている
………手には竹刀を持って
「おい」
青年が少女に声をかける
だが少女の耳には届いていないようだ
青年は溜め息をついて少女の目の前に立ち、再び声をかける
「おい」
すると少女は気づいたらしく竹刀を振るのを止め、青年に言う
「……何ですか?」
普通の人が聞けば声変わりをしていない少年だろう
だが青年はそれをあっさり見破る
「お前女だろ?なんで竹刀なんか振ってんだ」
青年は少女に握られている竹刀を見つめる
これが少女と後の《鬼副長》、土方歳三の出会いであった
.
最初のコメントを投稿しよう!