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足首をぐりぐりと回転させた後、再び奔走を開始する。
しかし俺は現場、運動部でもなければ常日頃から体力作りをしているという訳でもない。
ましてや女の子をお姫様抱っこし、しかも走るなんて、彼女いない歴=年齢の俺にそんな経験がある訳が無い。
呼吸はすぐに乱れ、脚部にはどんどん疲労が溜まって行く。
五分としないうちに額から汗も噴き出してきた。
空気が俺の皮膚を伝い、熱気を冷ます為に躍起になっていたが、焼け石に水だ。
更に、
「おお~っ! すごいすごーい!」
はしゃいで手足をバタつかせる女の子。
バランスを崩さないように走るのに、更に余計なエネルギーが消費されていく。
……おかしいな。
何故俺は、高校生活最後の一年が始まろうとしてる初日から、こんな大変な思いをして学校に通わなければならないんだろう。
しかし女の子を無視しようにも、俺の方からぶつかってしまったし、それはやっぱり出来なかった。
俺は依然はしゃぐ女の子を落としてしまわないように、学校への道をただひたすら走る。
走る。
走る。
走りながら、感じた。
今日は、ひでぇ一日だ。
その時、俺はまだ何も理解していなかった。
この偶然の出会いが俺の平凡な日常を破壊し、再構築し、そして……運命を変える事になる、と。
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