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「……悪いけど」
どうやら、男は断ったようだ。少しだけ男の顔が気になって、ひょいと顔を出す。と、わたしはどうやら、とことんついていないらしい。
目が合ってしまった。
男の方と。
「…………」
「…………」
「ど、どうして!?」
嫌な沈黙を破ってくれたのは、ふられた彼女だった。今だけはGJと親指立てざるを得ないだろう。
しかも、わたしの出現にぱちりと目を瞬かせた男には、見覚えがあった。有名人である。
金色に近い、茶系の髪。
赤縁のおされ眼鏡に遮られた、ダークグレイの瞳。
この学校でもまたとないイケメン度(しかも、イケメンでなくともよく目立つ容姿だ)の男、黒川刹那(くろかわせつな)は。
「僕は、君のことを好きじゃないんだよ」
「そんなの、付き合ってたら好きになるかもしれないでしょ!?」
おお、頑張るな女。黒川くんもそんな「めんどくさいZE」みたいなあからさまな顔しないで。表情豊かだねきみ。
図書室の貴公子。
そんな、笑える呼び名で親しまれているらしい。黒川くんとやらは。
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