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アルクエットは満足したように小さく頷くと、ゆっくりと息を吸い、静かに吐き出した。
一筋の汗がアルクエットの頬を伝う。
アルクエットは剣に込める魔力を弱め、ニカリと白い歯をモルベンじいさんに見せた。
魔力供給を失った剣は輝きを失い、刀身は鋼色へと戻る。
「すげーや!モルベンさん」
「うむ、アルクや。その剣の真威は、鋭き刃部のみにあらず。この剣を通して放つ魔法は、倍以上の威力を誇るであろう。そこいらの魔導師の杖には、決して引けは取らぬて」
モルベンじいさんも笑顔で返す。
贈り物を気に入ってもらえて、モルベンじいさんも嬉しいようだった。
二人の間に満足感が漂った時、家の扉が大きな音を発てて開かれた。
二人はその音に驚き、開け放たれた扉の方に視線を移す。
そこには、膝に手を置き、肩で呼吸するエリスの姿があった。
「はぁ、はぁ。わ、私を、はぁ、お、置いて、先に行っちゃうなんて、はぁ、酷い……じゃない。アルク」
エリスは涙目になりながらアルクエットを睨む。
エリスも今日、この日を楽しみにしていたのだ。
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