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──アルヴェン帝国領内にリーブという町がある。 その町は海と山に囲まれ、緑豊かで、とても長閑かな場所だった。 自然が豊かで、新鮮な食材が容易に手に入る事から、リーブの料理は美食家達の間でもちょっとした話題になっていた。 そんなリーブの町には少し離れた場所に、小高い丘がある。 そこには、大きく立派な屋敷が建っていた。 その屋敷の歴史は古く、町一番の年長者が生まれる遥か以前からそこにあった物だと言う。 建物の造りこそ古めかしいものの、外壁、窓や屋根、それこそ門や塀にいたるまで、疲弊の色が一切感じられない。 寧ろ、昨日今日完成したばかりの新築物件と言われても納得してしまう程、手入れが行き渡っていた。 町のどの家屋より大きく、丘の上から町を見下ろすように建っている事や、一向に老朽化しない様子から、町人はその屋敷を『郊外の城』と呼んでいた。 その“城”の主(あるじ)は一体どんな人物なのか? それは、リーブの町に住む人間であれば、誰しもが、一度は興味を持つ疑問である。 ましてや、好奇心旺盛な少年であれば、なおさら知りたいと思うのも無理はない。
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