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たわわに稔った作物の実が、浜からの爽やかな潮の香りを乗せた風に吹かれ、一斉に音を立てている。 騒ぎ立てるような豪快な音は、今年が豊作だと物語っていた。 もう間もなく収穫時期を迎える頃合いだ。 田畑を吹き抜けた潮風は、まるで最後の一仕事だとでも言うように、町一番の大きな木の枝葉を揺らし、去って行った。 浜からの風と入れ違いで、一人の少女が、町一番の大きな木の元に駆けて来る。 少女は町一番の大きな木の根元から、天を仰ぐように上を向くと、両手を口に持っていき、精一杯の大きな声で、幼なじみの名前を呼んだ。 「アルク!ねぇ、アルクってば!アルクエット!もー、アルクエット・フィリスティア!いるんでしょ!?」 アルクエット・フィリスティアと呼ばれた少年が、生い茂った葉の間から顔を覗かせる。 「何だ……エリスか」 木の上に向かって、アルクエットの名前を呼んでいた少女エリスを、緑の葉っぱ越しに確認すると、アルクエットは、再び生い茂る葉の間に顔を引っ込めた。 「あ、コラ!ちょっと!ねぇ、アルク!」
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