4章 帰りたい場所

28/38
前へ
/274ページ
次へ
覚悟 壱  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 俯いたまま言葉を続ける。 「さっきお前言ったよな。殺す覚悟ができたんですねって。それは違う。俺には人を斬る覚悟も殺す覚悟もねぇ」 「…へぇじゃあ何の覚悟を持って此処にいるんですか」 試すような声音が降ってくる。俺はゆっくりと顔を上げ、口端を吊り上げた。 「仲間の命を背負う覚悟だ」 刺さったままの剣を、左手でぐっと握る。赤い血が刃を伝って地面に落ちる。 俺の行動に驚いたヒイラギは、とっさに剣を抜こうと力を込めた。それ以上の力で刃を握り締め、一瞬隙のできたヒイラギの懐に潜り込んだ。 血が落ちる。 今は痛みなんてどうでもよかった。 懐から首輪を取り出し、空いてる右手でヒイラギの首にあてる。一瞬赤い石が光り、キィィンと高い音と同時に首輪がしまった。 驚くヒイラギの肩を押し地面に倒す。刺さっている剣を肩から抜きヒイラギから奪う。両手で剣を握り締めて、ザンっと下に突き刺した。 ヒイラギの首の真横に剣が刺さる。 全ては、一瞬だった。  
/274ページ

最初のコメントを投稿しよう!

333人が本棚に入れています
本棚に追加