333人が本棚に入れています
本棚に追加
終着
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ぐすっと鼻を啜りながらハスミが顔を上げた。
「本当に、良かったです。シオンも、紅の皆さんも、警備隊の方も、無事で良かったです…っあっ!あのっツ、ツバキさんも目を覚ましたんですっ!」
ハスミが嬉しそうに俺の右手にぎゅっと力を込めた。
「は、早く会いにいきましょう!隣の部屋にいます、から…え、シオン…?」
ハスミが戸惑ったように俺の顔を見ている。当然か。今の俺はとんでもなく情けない顔をしているから。
「…ハスミ」
「はい…」
「俺な、今すごく安心した。ツバキの目が覚めたって聞いて、本当に安心したんだ。でも同時に怖い。ツバキに会いたいけど…」
それ以上言葉を続けられなかった。
俺のせいで危険な目にあったツバキに、どんな顔で会えばいいんだろう。その上一度逃げ出している。
俯いていると、ハスミが握った手をそのままに立ち上がり歩き出した。
「ちょっハスミ?」
無言で歩くハスミに引きずられていく。医務室を出て、隣室の扉の前に立った。
ここに、ツバキがいるんだ。
俺はそれ以上足を進めることができなくて俯いていると、ハスミが優しい声で言った。
「ツバキさん、目が覚めた時真っ先に聞いたんです」
俺はゆっくりと顔を上げる。
「アイツは無事かって」
俺はさらに情けない顔になった。
「だから、会ってあげて下さい。無事な姿を見せて下さい」
ハスミに背中を押されるままに、扉を開けた。
最初のコメントを投稿しよう!