4章 帰りたい場所

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弐  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 足音を立てないようにゆっくりと部屋の中を歩く。いくつかのベッドと、簡易のソファーが置かれていた。ツンと刺激のある消毒液の匂いが鼻を掠める。 白いカーテンの向こうで、影が動く。俺は緊張しながらそちらに近寄った。カーテンの前に立つ。少し手を伸ばせば、触れられる距離。 「ツバキ…」 カーテンの向こうで影がゆらりと動いた。 どうしよう。 何を言えばいい? ごめん? そんな簡単な言葉で済ませていいのか? 黙っていると、突然中からシャッとカーテンが開き、白いものが飛んできた。避けることが出来ず、思いっきり顔に当たった。 「ぶへっ!!」 白いもふもふしたもの。枕だ。顔でそれを受け止めるが、ずるずると落ちていく。びっくりして前を見ようとすると、ばふっとまたもや枕を顔に当てられた。 「へ?ひゅはき?」 声がくぐもって上手く名前が呼べない。もふもふに顔を覆われながらどうしようかと困惑していると、ハァーと溜め息が上から降ってきた。それにびくっと肩が跳ねる。 あぁやっぱり呆れてるんだろうか。 すると、ずばんと鋭いチョップが頭に振り下ろされた。 「もぎゃっ!」 「こんのマメチビ!おっせぇんだよ!」 「ふぁい?」 「俺が助けてやったんだから、さっさと礼を言いにこい。土下座しながら礼を言いやがれ」 「はぁ!?」 「まぁこれでお前に貸し一つだな、マ メ チ ビ」 「むがぁー!」 枕を押し付けられたまま唸る。けれどすぐに黙り、前が見えないまま手を伸ばし、ツバキの腕を掴んだ。  
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