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弐
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足音を立てないようにゆっくりと部屋の中を歩く。いくつかのベッドと、簡易のソファーが置かれていた。ツンと刺激のある消毒液の匂いが鼻を掠める。
白いカーテンの向こうで、影が動く。俺は緊張しながらそちらに近寄った。カーテンの前に立つ。少し手を伸ばせば、触れられる距離。
「ツバキ…」
カーテンの向こうで影がゆらりと動いた。
どうしよう。
何を言えばいい?
ごめん?
そんな簡単な言葉で済ませていいのか?
黙っていると、突然中からシャッとカーテンが開き、白いものが飛んできた。避けることが出来ず、思いっきり顔に当たった。
「ぶへっ!!」
白いもふもふしたもの。枕だ。顔でそれを受け止めるが、ずるずると落ちていく。びっくりして前を見ようとすると、ばふっとまたもや枕を顔に当てられた。
「へ?ひゅはき?」
声がくぐもって上手く名前が呼べない。もふもふに顔を覆われながらどうしようかと困惑していると、ハァーと溜め息が上から降ってきた。それにびくっと肩が跳ねる。
あぁやっぱり呆れてるんだろうか。
すると、ずばんと鋭いチョップが頭に振り下ろされた。
「もぎゃっ!」
「こんのマメチビ!おっせぇんだよ!」
「ふぁい?」
「俺が助けてやったんだから、さっさと礼を言いにこい。土下座しながら礼を言いやがれ」
「はぁ!?」
「まぁこれでお前に貸し一つだな、マ メ チ ビ」
「むがぁー!」
枕を押し付けられたまま唸る。けれどすぐに黙り、前が見えないまま手を伸ばし、ツバキの腕を掴んだ。
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