4章 帰りたい場所

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弐  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 鉄格子を握りながら、ヒイラギは笑う。 「あははー俺、あんな風に負けたの初めてだったんですよ」 「…」 「すっごい楽しかったなぁ。一番興奮したのは君に刃を突きつけられた時だねー赤い血を流しながら睨みつけられた瞬間びびっとキたね!快感とか快楽っていうのかな?そんな感じ!」 俺は口元をひきつらせながらヒイラギの言葉を聞いていた。引き気味の俺に気付くことなくヒイラギは言葉を続ける。 「あぁー思い出しただけでゾクゾクする。でも一つ残念なのは君の本気が見れなかったことかな」 ヒイラギが俺に向かって手を伸ばし、指先で俺の顔を指した。そのまま指をゆっくりと下におろし心臓の上でぴたりと止める。 冷たい空気の中、声が響く。 「身の内に獣を飼っているでしょう?」 互いに真正面から視線を交わらせる。 「俺と同じ、血に濡れた獣を」 伸ばされた指が俺に触れることはない。 数秒、数分、沈黙がその場を支配する。 やがて指がゆっくりと下ろされ、ヒイラギがまたにっこりと笑った。 「次は本気、見せてくださいね」 「次なんてねぇよ」 間髪入れずそう返してやると、やはりヒイラギは楽しそうに笑うだけだった。 きびすを返し牢を後にする俺の背中にヒイラギの声がかかる。 「また、会いましょう」 俺はもう振り返らなかった。  
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