5章 変わり始める日々

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やって来たのは 壱  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ かちゃりとドアノブの回る音がどこか遠くで聞こえた。それが俺の思考を現在に戻す。 あれ、今俺は何を言った?昔を思い出して、そして? 「おいキリヤ。お前人に飲み物頼んどきながらさっさと部屋に戻るなよってなっ!」 慌てたような誰かの声が聞こえたかと思うと、俺の上から重さがのいた。 「あぁあーカエデってばイイ所で邪魔すんだからー」 「はぁ!?そんなことよりお前っ!」 かちゃんと二つのカップを机に置き、こちらに走りよってくる。俺はまだ頭に靄がかかったような状態で、ベッドに手をついて起き上がるのがやっとだった。 「はぁーもうカエデのせいで萎えちゃったぁ」 キリヤは服を適当に整えると空いたままの扉の前に立ち、こちらを振り向いた。 「じゃ、また後でねーカエデ、シオンちゃん」 いつもと変わらない笑顔でそう言うと、ぱたんと扉を閉めて部屋から出て行った。 「おいキリヤ!!たくっ何考えてんだあいつは…」 はぁーと盛大なため息をつくとベッドの真横に立ち俺を見下ろしてきた。 「…大丈夫か隊長さん。未遂、だよな…?」 乱れた格好のままであることに気づき、慌てて服の前をあわせた。お前は乙女かっとツッコミの入りそうな格好だが仕方ない。 「ご、ごめん!何でもないんだ!冗談みたいな感じで、その、こんなことになって」 「いや…」 カエデが俺に向かって手を伸ばす。その手に反射で体が大きく跳ねた。 「っ!ごめっ違くて」 声も同じくらい震えていて、俺は情けなくて堪らなくなった。  
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