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先に殴りかかったのは幸村。
佐野の左頬にパンチ。
よろめき耐えて佐野も負けじとアッパーを繰り出す。
顎から来た衝撃に脳が揺れる。
その隙に佐野の強烈な蹴りが横腹にクリーンヒット。
そのまま吹っ飛んだ幸村。
「勝負ありだな」
ゴホッゴホッと咳き込む幸村を見て、切れた口端で言うとニヤリと口角を上げる佐野。
そして携帯で時間を確認すると、
「俺用事あるから、じゃあな幸村」
と歩き始めた佐野。
そんな佐野に幸村は、
「っ‥待て!勝負はついてねぇ!」
いまだ揺れる脳と横腹の痛みに眉を寄せながら叫ぶも。
佐野はヒラヒラと手を揺らすだけで、足を止める気は無いようだ。
そして佐野は階段を降りて行った。
勝負の悔しさ。
そして自分の言葉に耳も傾けない佐野への怒りに、幸村は音楽室の下駄箱を蹴った。
八つ当たり。
へこんだ下駄箱を見て幸村の怒りは幾分減った。
それは確かなのだが。
幸村は、吹っ飛んだせいで白く汚れた学ランをはたくと、
佐野が降りて行った階段とは逆の階段から降りて行った。
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