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幸村 律。
さっきの怒りは沈んだ。
それは確か。
けれど幸村は焦っていた。
自分と佐野との間に力の差が出てき始めていることに。
中学の時は互角にやれてた。
それがどうだ。
今じゃ、あっという間にやられてしまう。
佐野はどう思っているのだろうか。
幸村は無意識に佐野に蹴られた横腹をさすった。
あぁ、そういえば佐野は何かと因縁をつけられては喧嘩を売られていた。
確か女絡みのことで。
中学の時からの喧嘩仲。
だいたいのことはわかっている。
高校に入ってからも女をとっかえひっかえしてる佐野。
よく喧嘩を売られている。
力の差が出てきたのはそれが原因か。
そう考えた所で幸村は頭をブンブンと振った。
「‥違う、俺が弱いだけだ」
幸村は自分に言い聞かせるように、小さく呟いた。
彼女はいたことはあったが、何かと面倒になって、すぐに別れた。
勉強なんて言葉は遠い昔に忘れた。
特につまんないと思ったことの無い人生。
いたって普通の人生だと幸村は思った。
~
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