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( 嘘だろ?嘘だろ?最悪だっ!! )
走るのをやめ、肩を上下にしながら息をする幸村。
そして、はぁと息を吐いて夜空を見上げ呟いた。
「なんでよりによってあいつなんかと」
ゴシゴシと袖で口を拭い、チッと舌打ちをした。
一生会いたくねェと幸村は思ったがそうはいかず。
翌日には運悪く、学校に行って早々、佐野と鉢合わせてしまった。
「よォ幸村」
なんだかニヤついてるようにも見える顔つきで声を掛けたのは佐野。
一方、幸村はというと。
「………」
口をへの字に曲げ、眉間に皺を寄せていた。
そして佐野に背を向け歩き出した。
「おい幸村待てよー」
明らかに楽しそうな声色に、イラついた幸村はスピードを早め、スタスタと歩いていく。
「うおっ!!」
するとすごい力で腕を引っ張られ引き寄せられた。
もちろん引っ張ったのは佐野で。
引き寄せたのも佐野だ。
まるで幸村に後ろから抱きつくように。
急な出来事に訳が分からなくなった幸村だが、冗談じゃねェと佐野の腕を振りほどこうとした時、
佐野は幸村の耳元で甘い声で囁いた。
「…幸村の唇って、意外と柔らかいんだな」
~
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