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彼は何も聞かず、寅之助の腕に抱えられた住人を見ると、静かに「……許せ」とだけ言い、そのまま斬られた男の首をあらぬ方向へひねった。
にぶく骨の鳴る音と共に住人が絶命したのを見届けると、竜は目を閉じて合掌した。
「……おい役人供。一体何の訳があって俺の仲間を斬りやがった」
竜の声は怒りに震えている。
そのまま静かに立ち上がると、鋭い眼差しで役人たちをにらむ。
「コイツ、神谷の悪竜だ……」
彼等の一人がそう言うと、役人たちは全員身体を強張らせた。
竜の内に燃え上がる怒りをその場にいる全員が感じとっていた。
それは仲間の寅之助でさえ、息をのむほどの異様さである。
だが、人一倍自尊心の強い村山鷹利は怯(ひる)まなかった。
「あぁ……、やっと出たか。自分から来るとは、捜す手間が省けた。神谷町の竜、貴様は投獄だ」
「投獄?何の理由で投獄だか知らねぇが、まあいいさ。好きにすればいい……。
だが仲間の仇が済んでねぇんだ。俺をひっくくる前に、まずは覚悟しろよ、テメェら……!」
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