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彼のいら立ちはいっこうに収まらなかった。
夜の闇のせいか、末吉には気付かれなかったが、鷹利の顔には大きな青アザが出来ている。
着物も袖や襟元がほころんでいたり破れていた。
こんな恰好になった理由は、先ほどまで神谷町の騒動で揉めに揉めていた為だ。
帰宅して部屋に入り、一息入れた今になって、身体中のあちこちが痛い。
その痛みを感じると、鷹利の収めどこのないイラ立ちは、自分への怒りに転換して、歯ぎしりを立てながら暗い部屋の床を叩いた。
長屋から住人を退去させる仕事が簡単な事だと思っていた訳ではない。
ただ今日の自分が行った、ぶざまな仕事振りが腹立たしかった。
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