2・闇

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村山鷹利はその過去に三度、人を斬っていた。 一度目も二度目もその後も、いずれも町方廻りの職務中にである。 一度目は逃げる罪人を取り囲んだ際に反撃を受け、無我夢中でやむなく斬った。 この時は六年前。 その当時は藩校を出たばかりの十六歳だった。父親と供に町方廻り同心として職務に就任し、半年を過ぎた頃である。 鷹利は藩校兵学館を首席で出た秀才として、一年目から大いに期待され活躍していた。 だが順風満帆とした頃の人斬り。 まだ町方廻りとして若すぎた彼は、人斬りをした自分を、心の底まで病んでしまった。
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