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「竜……、必ず生きてまた会おう。それまでは達者でいてくれ」
「あぁ……寅之助、てめえも達者でな。お互い生きてりゃ、また会うだろう」
「がってんだぜ……!」
それが別れ際に交わした、ふたりの会話だった。
なぜ、竜と呼ばれる彼が役人たちに追われる身になったのか、それは寅之助にも竜自身にもわからなかった。
これが、彼らの父の時代から続く『血の宿命』であることなど、この時は知る由も無い。
いずれにせよ『神谷の悪竜』は、こうして水石藩から完全に姿を消し、以降ふたりが再会を果たすのは、十余年のちの事になる。
この時、『神谷の悪竜』は十九歳。同じく『放蕩(ほうとう)の悪虎』と呼ばれた村山寅之助は十六歳。若いふたりは、この日を境に、その人生を大きく変える事になる。
だがまずは、この火種が起こった前日まで、時を遡(さかのぼ)りたい。
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