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「くそっ……、死ぬなっ!こんなくだらねぇ事で死ぬなっ……!」
寅之助は斬られた住人に何度も呼びかける。
住人は致命傷だが、まだ微かに息があった。
しかし息があっても、なす術はなかった。ただ吐血と流血に苦しみ、涙を流すばかりである。
「寅之助か……、この愚弟め。十手仕事の邪魔をするんじゃない!」
背後から兄、鷹利が抜刀のまま立ち上がっていた。
「どけ愚弟、貴様ごと叩き斬るぞ」
「やれるもんならやってみろ!クソ野郎!」
寅之助が怒りに任せて立ち上がろうとした瞬間、目の前に立つ兄は背後から何者かに着物の襟首を捕まれ、再びのけ反るように倒された。
現れたのは、藍色の着流しを着た長い白髪の男。
寅之助の眼前には、竜の姿があった。
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