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最近この長町(ちょうちょう)を騒がすイカレタ妖刀だ、と。
人切りは音もなく近づき、例外なく庄吉へ切りかかった。
「逃げようにも小便の途中で、どうにも体が動かねえ」
庄吉は肩を左右に揺らし、大工仲間にその出来事を説明していた。
あっという間に、庄吉の股下まで刀が振り下ろされた。
と思いきや、切られた張本人の庄吉は無傷。
真っ二つに切られたのならば、右手で左の金玉も触れなくなるはずだが、どうにも触れるようだ。
ただ、小便だけが二つに割れていたな、と庄吉は付け加えた。
妖刀が妙ちくりんななまくらと分かった庄吉は、人切りに詰め寄り、妖刀をへし折った。
さらには、人切りの顔面にも拳をお見舞いしたと、皆に無骨な拳を見せびらかした。
人切りは顔を押さえて逃げたという。
彼はそのみやげにと、川原の石を持って帰った。
次の日、いつもどおりに大工仕事を終え、仲間と一杯飲むなか、庄吉は昨晩に出会った妖刀の話をしたのだ。
「するってーと、何かい? この石はてめえの小便がついてるっていうのかい?」
「おお、そうよ。この庄吉さまの小便がかかったありがたい石よ」
「うわっ! 汚えなおい!」
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