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それから数十年後。
庄吉は齢五十で往生すると、妻のそうは一晩中枕元に座った。
そうは、後生大事にしていたからと、庄吉の棺おけの中にあの小便石を入れてやった。
それからさらに、数百年が経った。
都市開発のために、ユンボが安芸羽区のとある民家を解体した。
新しくマンションを建てるために、地盤を固めようとショベルカーも導入され、土を掘った。
固い層を取り除く頃に、大量の木片と人の骨が出てきた。
やっぱり墓の跡地かと、監督が会社に電話するなか、若い作業員が親方に隠れて、凹の下に安全靴の跡を着けた。
手の平ひとつ分、土をめくった先に一個の石があり、なんとなく若者が拾った瞬間。
パカンッと、その石が割れた。
すると、足元で、もう一度パカンッと乾いた音が聞こえた。
破裂のはずみで出てきたのか、土の表面には薄汚れた歯のような塊が見える。
若者は恐ろしくなり、拾った石を投げ捨てた。
妖刀幾星霜。
それは切られた者が切られたことに気づかず幾星霜。
長い時を経て切られるという妖刀であったが、その時代の誰もがそれを知らず、工事の仕方を見直すだけだった。
妖刀幾星霜物語 終
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