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「モン…スター…?」
どんなやつなのか異常なほどに気になる。しかしミカエルは俺を制止しながら静かに言った。
「気を引き締めて。あなたにとっては初戦闘です。少し油断する。それが意味するものは分かりますか?」
分からない、わけがない。
「…………死」
つい最近起きたもう実感したくないもの。
思い出すだけで吐き気に襲われる。
「正解です。あなたがごく最近に体験したものです。もう一度体験したいですか?」
「…絶対に嫌です」
「それが普通ですよ。危ないと思ったら下がってもいいですから無理しないでください」
「分かりました」
ミカエルの後ろで軽く頷き、腰に掛けてある剣に手をかける。
「では行きましょう…私が最初に攻撃し注意を引きます。そこをあなたが攻撃して倒す。それでいいですね?」
「俺に出来るのか…?」
「大丈夫ですよ、ちゃんとサポートしますから……では、行きます!」
岩陰からミカエルは躍り出るとモンスターがいる所まで駆ける。俺は先ほどまでミカエルのいた場所に動く。
三カ所から土煙が上がり
――――三匹のカブトムシの幼虫みたいな大きな口を持った細長い芋虫が姿を露わにした。
「キ、キモッ……」
俺がぼやいてる中ミカエルは何処からともなく一歩の槍を出す。いや、出現させたといったほうが正しいかもしれない。
ミカエルが出現させた槍は白い。純白で一切の汚れがついていない。
しかし槍は薄水色まで淡い光を纏いそれは見る者の目を惹きつけ、畏怖させる。そしてミカエルが持つと見とれてしまう。
ミカエルは槍を構え芋虫一匹に狙いをつけると一閃――――――
一匹の芋虫が上半身を吹き飛ばしその場に倒れた。
俺には動きが速く、目では追えなかった。だが判ることは一つ。
槍は芋虫に触れていなかった。
魅入っているとミカエルと目線があい、「こっちに来い」と目で訴えた。
俺は盾を強く、力強く握り締め、鞘から剣を抜く。
……大丈夫だ。自信を持て。俺なら、俺なら出来る筈だ…
自分に言い聞かせる。喝を体に入れた所で深く息を吐く。
「行くぞ!」
芋虫に向かって走り、距離を詰める。
此方に気づいた芋虫は、勢いよく食らいついてくる。
身を低くしそれをかわす。
――――そして芋虫に剣を突き刺し、
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
奇声をあげ、剣を滑らした。
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