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映研設立から数日たったある日の放課後。部長に決まった黒髪ツンツンヘアの風波建吾(カザナミケンゴ)から「部室を確保した」と伝えられ、映研メンバーはその部室に来ていた。
体育館の隣にある施設の一室が俺達の部室だ。この施設は水仙館(スイセンカン)といって、軽音部や茶道部など、校舎内に関連する特別教室を持たない文化系クラブの部室が集まる施設だ。
「ここが俺達の部室だ。見ての通り撮影に必要な機材はいくつか用意してある」
「建吾、これどっから持ってきたんだよ?」
照明器具や小道具大道具、衣装などがそこにあった。
俺の質問に建吾は少し思案しながら答える。
「持ってきたっつか、実は最初からあったんだよな。ここ、演劇部の部室だったらしくてよ」
言われてみると確かに演劇で使いそうなものばかりだ。しかし照明器具や作業用BGMが収録されたCDは映研に流用できるのではないだろうか。
「まずはいらねぇ大道具やら衣装やらを処分する。明日から映研本格スタートだ」
まさか掃除が最初の活動だとは思わなかったぞ、建吾。
「片付けなら任せなさい。あたしの得意分野よ」
焦げ茶色のセミロングヘアを揺らし、元々つり目気味だった目を更につり上げる小渕美紗(コブチミサ)。
「すんごい張り切ってるね美紗ちゃん」
ナチュラルブラウンの艶やかな髪をポニーテールにして屈託の無い笑みを浮かべる大塚みゆり(オオツカミユリ)。
「じゃ、始めるッスよ」
で、俺こと水嶋優人(ミズシマユウト)。
全員で4人。今更ながらこの人数で足りるのだろうか?
「じゃあ、あたしは衣装整理するね」
「みゆりがやるならあたしもやるわ。男子、力仕事は任せたわよ」
「任せとけ」
「ん、分かった」
映研でも使えそうな衣装を選ぶ女子2人を尻目に俺達男子は必要の無い道具類の処分を始めた。
「あからさまに手作りな草むらとか木とかがいらないのは分かるけどさ、これどこに持ってけばいいんだ?」
俺の問いに健吾は何故かバキバキと拳を固めながら答える。
え、それなんで指鳴らしてんの?
やる気のアピール?
「そういうヤツは全部2階の用具室だ。鍵は俺が持ってる」
詳しい場所は健吾に案内してもらおうと思い、俺はベニヤでできた草むらを持って歩き出した。
意外に重いなこれ。
「つーかよ優人、オマエ映研入っちまっていいのかよ?」
「うん? なんで?」
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