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「いや、乗り気には見えなかったからよ。ムリに引き込んじまったみてぇで、悪いな」
建吾は言葉遣いが荒かったり目つきがあまり良くなかったりと不良のようなイメージが先行してしまうが、全く違う。仲間思いの良い部長になりそうだ。
乗り気でなかったと言われれば、確かにそう見えたと思う。しかし入部は俺自信の判断だ。建吾は悩まなくていいのだ。
「気にすんなって。楽しそうだったから入ったんだから」
「なら、まあイイけどよ」
「それより人数の方が心配ッス。4人で足りんの?」
「人数か……。これから増やすしかねぇな。実際4人じゃ足りねぇのは確かだしよ」
ほとんどの新入生がどの部に入るかを決めたこの時期に突然作られた映研に入部を希望するヤツがいるかいないかは置いといて、やはり4人ではまともに活動できないらしい。
やろうと思えばできないこともないらしいのだが……。
「でよ、みゆりの演技力はどんなもんなんだ?」
「いや知らないけど」
「は? なんでだよ?」
「俺高校入ってからみゆりと知り合ったんだぞ?」
「マジかよ? 同じ中学だと思ってた」
「それ美紗にも言われた。そんな風に見えんの?」
「最近知り合った感じには見えねぇよ」
「意外だわ。つーかさ、みゆりはともかく俺は演技なんてできないぞ?」
なんとなく、気恥ずかしくなって話題をそらす。
「ああ、心配すんな。役者以外にも仕事はあるって言ったろ」
話しながら歩いていると用具室に着いたようで、建吾はベニヤの草むらを床に置いてポケットから鍵を取り出した。
「つっても俺は、お前に役者をやってもらいてぇと思ってるけどな」
「人手不足だから?」
「それもあるけどよ、なんつーか、優人はみゆりと相性が良さそうな感じがすんだよ」
「相性?」
「ああ──」
建吾の言う相性というものが、俺には何の相性なのか分からなかった。
建吾は用具室の鍵を開けながら意味を噛み砕いてくれる。
「息が合いそうだっつー意味だ」
そのまんまだった。
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