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片付けが終わり、映研メンバーは部室に集まりくつろいでいた。不要なものが無くなった部室は意外に広く、居心地は悪くない。
「つかれたあー」
所々に傷の付いたベンチソファーに腰を落ち着けたみゆりが体を伸ばす。
「建吾、使えそうな衣装が無かったから全部処分したけど、いいかしら?」
「ああ、気にすんな」
美紗も言いながらベンチソファーに腰を下ろし、建吾は残った備品の確認中だ。何か手伝おうかと思ったが建吾が休んでいろと言うので、俺は2人の向かいにあるベンチソファーに座って雑談でもすることにした。重い荷物などもあったし、何より量が多かったから思っていたより身体の疲労が激しい。……運動不足か?
「お疲れ。なあ、美紗って脚本担当だよな?」
「そうよ優人。それがどうかした?」
「脚本の話した途端に入部決めてたから、脚本家でも目指してるのかなとか思った」
「あー、違うわ。似てるけどね」
「美紗ちゃんは小説家になりたいんだよね」
脱力しきっていた身体を起こしてみゆりが言った。ほんの数秒前まで顔に疲労の色を浮かべていたのに、今ではまたにこにこと笑っている。切り替えが早いというか、表情がころころ変わるというか……。
「ええ、みゆりにはちょうど昨日話したわね」
「なんか皆すごいな。みゆりは女優で建吾が映画監督で美紗は小説家だろ?」
映研メンバーのほぼ全員が夢を持っている。
……いや俺は無いけどね。いいじゃんまだ高校生なんだから。
「え、あたしはそんな……。女優さんになれたらいいなあっていう……それだけだからっ」
みゆりがまた表情を変えて焦る。
「いやー、夢を持ってるってことに意味があるんだって。つーか美紗はどんな小説書きたいんだ?」
「書きたいっていうか今書いてるわよ? まあほとんど趣味だけどね。今は恋愛モノ書いてるわ」
趣味と言いつつ、小説を書けるのは特技と言っていいのではないだろうか。
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