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「なにも役者だけが仕事じゃねぇよ。カメラも必要だし監督も必要だ。小道具、大道具に必要ならメイクとか照明……。欠かせねぇのは台本だな。仕事はいくらでもあるぜ」
「台本……。役者じゃなく台本だけってのはアリなのかしら?」
「大歓迎だぜ」
「なら入るわ」
あっさり3人目が見つかった。
「お前はどうすんだ?」
「え、俺?」
「帰りは遅くなるかもだけど、きっと楽しいよ」
「どうせヒマなんでしょ?」
「でもなあ……」
小渕の言う通り暇ではあるが。
『テメェは疫病神っつー訳だ』
少しだけ昔の言葉だ。
疫病神。あながち間違いではない。俺が映研に入って誰かが不幸にならないだろうか。そう思うと怖かった。ひとつ、簡単に恐怖を振り払う方法がある。
入らなければいいのだ。
もとより映研には興味は無い。
しかし俺は──。
「じゃあ、入ろうかな」
映研に入っていた。
俺のせいで誰かが傷つくジンクスを打ち破りたかったのかもしれないし、どことなく“あいつ”に似ている大塚が気になったのかもしれない。
自分でも自分の考えが理解出来ないが、俺は映研に入っていた。
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