8/13
前へ
/13ページ
次へ
時計を見ると、時刻はすでに22時を回っていた。 「じゃ、あたしそろそろ行くわ」 ふかふかのベッドから腰を上げ、玄関へと向かう。 ドアノブに手をかけた時、空いていた左腕が強い力で掴まれた。 振り返ると、トキオの顔。 何も言わずに、まっすぐあたしの目を見ている。 その視線はまるで、捨てられた子犬のようで。 母親に置いて行かれた子供のよう、で。 あたしが部屋を出る時、トキオはいつもこんな顔をする。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加